東京高等裁判所 昭和28年(う)3323号 判決
被告人 林清蔵 外
〔抄 録〕
控訴趣意第二点について。
当選を得しめる目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭を供与し、選挙人又は選挙運動者がその供与を受くるにおいては公職選挙法第二百二十一条第一項第一号又は第四号の罪の成立すること同条の明記するところであるから、選挙人が公職の候補者に当選を得しめる目的で投票又は投票取纏めの運動をすることの報酬として供与されるものであることを知りながら金銭の供与を受けるときは同条第一項第四号の罪の成立するものといわねばならない。従つて被告人林等に対する原判決及び被告人清水に対する原判決にはいずれも被告人等が単に昭和二十七年十月一日施行された衆議院議員選挙に際し選挙人であることのみが判示され、選挙運動者であることの判示のないこと所論の通りであるけれども、選挙人である被告人等が候補者内田信也に当選を得させる目的で投票竝に投票取纏めの運動をすることの報酬として不可分の現金を供与されるものであることを知りながら現金の供与を受けるにおいては同条第一項第四号の罪が成立するものであつて、同号の罪の事実摘示として被告人等がいづれも候補者内田信也のための選挙運動者であることを判示することを要するものではない。又被告人等の授受した本件の金銭がいづれも被告人等の投票又は投票取纏めの選挙運動をすることの報酬であり、その趣旨であることを諒知して授受されたものであることは右各原判決の引用する証拠を綜合すればこれを認めるに十分であり、所論指摘の被告人等の司法警察員竝に検察官に対する各供述調書中の供述記載その他記録を精査しても被告人等の授受した右金銭が正規の選挙運動の実費に充てるための費用であると認めることはできないのである。三浦義治が被告人君野を除くその余の被告人等六名に現金十五万円を供与する際同人が候補者内田信也に当選を得しめるため、投票竝に投票取纏めの選挙運動をすることの報酬とする趣旨でこれを供与したものであることは、右被告人等六名のこれが供与を受けた事実の認定について、右各原判決の引用している証拠によつてこれを認めることができる。しからば右各原判決には所論のような理由のくいちがいはなく論旨は理由がない。